第10章 彼らも結婚しなかった

病院に着くと、医師はひと通り診察したあと、日野遥の容体に大きな問題はないと告げた。どうしても不安なら、一晩入院して様子を見る程度で十分だという。

浅井景辰はあからさまに上の空だった。

「大したことがないなら、俺は――」

「景辰、少しでいいから一緒にいて。ひとりだと怖いの」

言い終える前に、日野遥が遮った。

浅井景辰は彼女を見下ろし、しばらく黙り込む。やがて掴まれていた手をそっと引き抜いた。

「ちゃんと休め。人を寄こして付き添わせる」

日野遥の顔がぴくりと強張る。

「帰るの?」

「……ああ」

短く答えただけで、ろくな説明もしないまま、浅井景辰は踵を返して病室を出ていった。

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