第100章 透は誘拐された

浅井景辰が病院に着いた頃、辻本雨妃は透の退院手続きをしていた。

医師の話では、透の経過は良好。自宅でしばらく静養すればいいという。

書類を手に病室へ戻ろうとした、その時だった。振り返った先――人混みの中に浅井景辰がいた。怒りを剥き出しにして、こちらを睨みつけている。

辻本雨妃の胸がひゅっと縮む。……鑑定結果を、もう知ったんだ。

深く息を吸い、感情を押し込める。視線を切り、彼を完全に無視してエレベーターへ向かった。

浅井景辰は危うい黒い目を細め、人混みを割って早足で迫ると、彼女の手首を乱暴に掴んだ。

突然の力に、辻本雨妃はびくりと肩を跳ねさせる。

「何するの?」

振りほどき、苛...

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