第132章 彼が選んだのは日野遥

翌日、浅井景辰は「提携の打ち合わせ」を口実に立花グループを訪れた。だが立花時安は用件でスイスへ戻っており、応対に出たのは陳知行だった。

もっとも、今日の浅井の目的は最初から商談ではない。上の空のまま座っているだけで、実際の話は江口准がほとんど引き受け、陳知行と淡々と条件を詰めていった。

打ち合わせが終わっても、浅井はすぐには帰らなかった。スマホを取り出し、辻本雨妃へ短く送る。

『何時に上がる』

その頃、雨妃は研究室で実験を終えたところだった。端末が震え、白衣のポケットから取り出して画面を見る。

浅井景辰――その名前に、眉間がわずかに寄る。胸の奥が、理由もなくざわついた。

実験台に...

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