第157章

指紋錠がピッと鳴り、ドアをほんの少し開けた瞬間、淡い紫のアジサイの花束がふわりと差し出された。

玄関に立っていた透は、小さな手で大きな花束を抱えている。茎が顔のほとんどを隠してしまっていて、花の向こうから覗く目だけがきらきらしていた。

透は顔を上げ、にこっと眉を弓なりにして笑う。

「ママ、おかえり!」

辻本雨妃は一瞬きょとんとして、それから微笑み、花束を受け取った。

丁寧に束ねられている。淡紫と淡い青が交互に重なり、ところどころに緑の葉が添えられていた。

雨妃は腕の中の花を見下ろし、首をかしげる。

「透、どうしたの。急にママにお花なんて」

透は雨妃の手を引いて、リビングへぐい...

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