第162章

笹川彦樹は辻本雨妃の前まで歩み寄ると、礼儀正しく軽く会釈した。あの日、彼女のオフィスで取り乱していた男の面影は、どこにもない。

「辻本さん。先日の件は、私が悪かった。考えなしに口を滑らせて、あなたを侮辱しました。今日は、皆さんの前で――改めて、正式にお詫びします」

そう言って微笑み、両手で差し出すように薔薇の花束を彼女の前へ掲げた。

「この花は、せめてもの償いの気持ちです」

宴会場が一瞬、しんと静まり返る。だがすぐに、ざわざわと囁きが広がった。

「笹川社長、どういう風の吹き回し? 配信のときのあの顔、絶対に謝らないタイプだと思ってたけど」

「でも……笹川社長、確かに顔はいいよね。...

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