第163章

「……ああ」

彼は拳をぎゅっと握りしめたまま、最後には淡々とそう答えた。

辻本雨妃はくすりと笑う。

「笹川若様は調べ物でお忙しいでしょう? でしたら、引き留めません。どうぞお先に」

笹川彦樹はその場に立ち尽くし、顔色が青くなったり白くなったりと忙しい。

しばらくして、歯の隙間から『……ああ』の一言を絞り出すと、踵を返して宴会場を出ていった。

ホテルを出た途端、笹川彦樹の「紳士」面は一瞬で剥がれ落ちた。

階段を下り、背後のホテルの正面玄関を振り返る。獣みたいに険しい目で、ふん、と鼻を鳴らした。

辻本雨妃のクズめ。自分がどれだけ偉いと思ってやがる。顔が少し良いだけで、他に何がある...

ログインして続きを読む