第164章

翌日の昼。辻本雨妃は手元の実験データの再チェックを片づけ、ようやく空いた時間で須藤言と、会社近くのレストランで昼食を取ることにした。

席に着いて間もなく、ふと顔を上げた雨妃の視界に、見覚えのある姿が入口から入ってくる。

辻本礼――。

叔父の辻本明良が、前妻とのあいだにもうけた息子。本来なら辻本家の長男で嫡孫にあたるはずだったが、礼の母が亡くなったあと、明良が依田玲と再婚してからは、礼は露骨に距離を置かれるようになった。

雨妃の両親が亡くなったとき、明良は父の会社を引き継ぎ、彼女の家の別荘にまで住みついた。あのとき、いちばん激しく反発したのが礼だった。けれど礼の力ではどうにもならず、明...

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