第172章

笹川彦樹は黒いジャケットを羽織り、抑えきれない高揚と焦りを滲ませていた。

辻本雨妃はスマホの画面を見つめたまま、口元にふっと弧を描く。

笹川彦樹の視線が、ベッドの上の盛り上がった人影へ落ちる。瞳の奥に、思いどおりに事が運んだという狂喜が浮かんだ。

彼は待ちきれないようにベッドへ飛びつき、上着を乱暴に脱ぎ捨てる。口からは下卑た言葉がこぼれた。

「今度こそ逃がさねえぞ! 今日が終わったら、泣いて縋るくらい気持ちよくしてやる!」

唇が、辻本礼の首筋から鎖骨へと貪るように落ちる。シャツ越しに手のひらが乱雑に這い、動きは焦れて荒い。

だが、すぐに違和感が走った。

……感触が違う。

肩幅...

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