第179章

浅井家の邸宅へ戻るなり、日野遥は怒りで全身を震わせていた。顔色を真っ青にして玄関をくぐる彼女を見て、使用人たちは一斉に肩をすくめ、壁際へと身を寄せる。息をするのさえ憚られる空気。

リビングに足を踏み入れた瞬間、遥は手近にあった青磁の花瓶を掴み――

「砰っ!」

床へ叩きつけた。

それでも収まらない。目につくものを片っ端から投げつけ、叩き割る。砕けた陶片とガラス片が、床一面に散らばっていく。

さらに彼女は花瓶をひとつ掴み、階段口で縮こまっていた使用人へ向かって投げた。

「何見てんの! 全員、消えろ!」

悲鳴にもならない声を漏らし、使用人たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

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