第54章 誰のために?

その言葉を聞いて、向こうにいた辻本椎子がようやく反応を示した。

眉をつり上げ、母を見やる。

「それは立花時安が、まだ辻本雨妃の本性を見抜いてないだけでしょ? でなきゃ、あんな女を気に入るわけないじゃない」

一拍置いて、彼女はふいに背筋を伸ばし、依田玲をまっすぐ見た。瞳の奥に、いやらしい打算がきらりと走る。

「お母さん、何かうまい方法考えてよ。私が立花時安に近づけるようにして。もし立花時安を落とせたら、もう辻本雨妃に振り回されなくて済むでしょ?」

依田玲が口を開くより早く、辻本明良が鼻で笑った。

「お前にできるわけがない。辻本雨妃より馬鹿なくせに。立花時安がそんな簡単に騙される男だ...

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