第72章 時安を諭してみよう

辻本雨妃は顎を上げて彼を見つめ、ふっと笑った。そこには、隠しようもない嘲りがあった。

「じゃあ、浅井社長は?」

逆に問い返す。

「どうして私のことに、そんなに必死なんですか。……まさか、私のこと愛してるとか?」

浅井景辰は目を細め、答えない。数秒、沈黙が落ちた。

「お前は、俺の女だ!」

手首を掴む力が、ぐっと強くなる。

辻本雨妃は眉を寄せ、睨み返した。

「頭おかしいんじゃないの! 私たち、離婚して何年よ。忘れた? 私、もう他の人との子どもまで産んでる。どのツラ下げて『俺の女』とか言ってんの!」

――皮肉だ。

離婚する前は、こんなふうに必死になったことなんて一度もなかったく...

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