第75章 誰にも変えられない?

浅井景辰は、わずかに目を揺らした。脳裏に、あの頃の出来事が浮かび上がる。

――あれは、彼が十歳の年。

祖父に連れられて田舎へしばらく滞在していたが、遊びに夢中になって山へ入り込み、そのまま道に迷った。

その日は雨が降っていた。びしょ濡れのまま大木の下に身を寄せ、寒さと恐怖で、しゃがみ込んで何度も何度も泣いた。やがて熱が出て、意識はふわふわと遠のいていく。

地面に倒れ込んだ彼の耳に、かすかに幼い女の子の声が届いた。自分の名を呼び、必死に腕を揺さぶっている。

次の瞬間、小さな背中が、彼を背負い上げた。

山道はでこぼこで、揺れがひどい。女の子は何度も転んだ。それでも手を離さず、歯を食い...

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