第53章 怒っている

安田美香の目には清らかな水が浮かんでいた。この頷きで藤原時が彼女にさよならを言ってしまうのではないかと恐れていた。

不安げに両手で男性のきちんとしたスーツを握りしめ、小さな顔を彼の胸に埋めながら、柔らかさで硬さを克服しようと試みた。「叔父さん、私はもう、あなたのことが好きで好きでたまらないの。こんなに長い間、心を砕いてあなたの彼女になれたんだもの、褒められるべきじゃない?」

藤原時は初めて、自分を弄んだことをこんなにも堂々と言い放つ人間を見た。いや、これは二度目だ。一度目はあの夜、彼女が自分に薬を仕掛けた時だった。

彼は本当に呆れて笑ってしまった。

安田美香のあごを持ち上げ、赤くなっ...

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