第57章 私が一番好きなものは今、目の前にある

誰かが噂を流したのか、藤原家が高坂家と婚姻関係を結ぶ準備をしているという話が広まっていた。

そのため、皆が気を利かせて高坂清美に道を譲っていた。

「藤原社長、伯母さまのお誕生日会、私、まだどんなプレゼントを贈るべきか分からなくて。今夜、少しアドバイスいただけませんか?」

藤原時はグラスの赤ワインを揺らしながら、淡々とした声で言った。「気持ちが大事ですから、お好きなものを」

高坂清美は諦めず、直接切り出した。「今夜、あなたの隣に座らせていただけませんか?」

藤原時は彼女を軽く一瞥し、「高坂さん、あなたに興味がありません」と言い残し、女性に冷たい背中だけを見せた。

高坂清美はその場に...

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