第15章

劣等感が潮のように彼女を飲み込んでいく。

その時、受付の女性が息を切らしながら駆け寄ってきた。手には小さな薬の箱を持っている。「奥様、大丈夫でございますか? 弊社では花粉症の方がいらっしゃる可能性を考慮し、アレルギー薬を常備しております。結城社長が、もし症状の重い方がいらっしゃいましたら、病院代は会社で負担するとおっしゃっておりました」

白川詩帆の視線が、藤堂詩織の赤く腫れた頬に注がれ、はっとしたように目を見開いた。

彼女は申し訳なさそうな表情を浮かべ、藤堂詩織の腕に触れようと手を伸ばしたが、相手は無意識にそれを避けた。

「ごめんなさいね」

白川詩帆は手を引っ込め、誠実そうな声色で言...

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