第20章

どれほどの時間が経っただろうか、ドアの外から控えめなノックの音が聞こえてきた。

「お父さん、お母さん、ご飯だよ」

結城和の声が、どこかおそるおそるといった様子でドア越しに響く。

結城時也は顔も上げずに「わかった」とだけ応えた。

藤堂詩織は本を閉じ、立ち上がった際に、ドアの陰に隠れる結城和の小さな頭がちらりと見え、胸にちくりと痛みが走った。

先ほど車の中で、自分の口調は確かに少しきつかった。

彼を呼び止めようと口を開きかけたが、その小さな姿は怯えた兎のように走り去ってしまった。

二人は前後して部屋を出て、書斎の前を通りかかった時、藤堂詩織は無意識に中を覗き込んだ。

結城沙耶が机に...

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