第23章

「そういえば、うちの主人と弟が最近起業で忙しくて、全然家に寄り付かなくてね。今日、主人がたまたま時間ができたから、夜うちに食事に来ない? 私の作る魚の煮付けは絶品よ。一度食べたらやみつきになること請け合いだわ」

藤堂詩織は無意識にスマートフォンに目を落とす。画面の時刻は四時半に変わったところだった。

「いえ、お気持ちだけで。子供を迎えに行かなければならないので、そろそろ失礼します」

彼女はふと何かを思い出し、付け加えた。「お宅の念念ちゃんも一緒に迎えましょうか? ちょうど通り道ですし、お手間が省けるかと思います」

「ううん、大丈夫よ。お手伝いさんがもう向かってるから。時間通りに迎えられ...

ログインして続きを読む