第26章

白川詩帆の手は宙で止まり、振り返ったその瞳には、ちょうど良い具合の戸惑いが浮かんでいた。「どうかなさいましたか?」

「USBメモリは沙耶と和が隠したの」

藤堂詩織はベッドのそばへ歩み寄り、存在しない皺をシーツの上で伸ばした。「さっき食事の前に、沙耶がもう白状してくれたわ。後で直接あの子たちに聞けばいいのよ」

白川詩帆の顔から驚きの表情は一瞬で消え、すぐに穏やかな笑みが戻ってきた。「そうだったんですね。あの子たちも、どんどん腕白になっていきますわ」

彼女は立ち去る気配を見せず、逆に藤堂詩織のパソコンの前へと歩み寄った。画面には、まだ結城グループの四半期報告書のページが表示されたままだ。

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