第31章

一枚一枚の絵画が展示ホールの壁に掛けられ、藤堂詩織はゆっくりと歩を進めながら鑑賞していた。

率直に言って、彼女は白川詩帆という人間が好きではなかったが、今この瞬間、白川詩帆には確かに人並み外れたところがあると認めざるを得なかった。

彼女の画風は繊細で温かく、色彩の組み合わせも絶妙だった。

例えば、あの『午後の陽光』と題された作品。絵の中では、小さな女の子が窓辺にうつ伏せになって本を読んでいる後ろ姿が描かれ、木の葉の隙間から差し込む陽光が彼女の髪先に落ちている。ごくありふれた光景のはずなのに、なぜか不思議と心が安らぐ。

彼女には感じ取れた。白川詩帆は心から絵を愛している。その愛情は装われ...

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