第39章

藤堂詩織のキーボードに置かれた指がきゅっと強張ったが、表情は平静を保ったままだ。「加藤補佐、何か御用でしょうか? なければ仕事に戻ります」

「仕事?」

加藤琳は何か面白い冗談でも聞いたかのように鼻で笑うと、くるりと向きを変え、そばのファイルキャビネットから分厚いフォルダーの束を抱え出してきた。そして「ドン」という音と共に、藤堂詩織の目の前のデスクに叩きつけた。途端に埃が舞い上がる。

「これは会社がここ五年で溜めた人事資料よ」

彼女はフォルダーをパンパンと叩き、声を急に張り上げた。「結城社長が会社の状況に慣れておくようにと。緊急の用件だから、今日中に整理して、部署ごとに分類し、電子版でア...

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