第41章

彼女は小さなランドセルを背負って後部座席に潜り込み、座った途端、結城和がフンと鼻を鳴らし、大げさに白目を剥くのが聞こえた。

「ちっ、いい子ぶっちゃって。ああいうのが一番むかつくんだよ」

結城和の声は大きくなかったが、車内の全員に聞こえるには十分だった。「バレエがちょっと踊れるくらいでさ、本気でクラス代表で発表会に出られるとでも思ってんのかよ? どうせ、うちのクラスの恥さらしになるに決まってる」

藤堂詩織はハンドルを握る手にぐっと力を込め、呼吸が少し荒くなった。

彼女はバックミラー越しに結城和を睨みつける。「結城和、どうしてそんな言い方をするの。早く沙耶に謝りなさい!」

「俺は...

ログインして続きを読む