第51章

白川詩帆はなおも何か言い返し、面子を取り戻そうとしたが、あいにく学術検討会はちょうど田中院士が登壇する番だった。

老人は矍鑠としており、登壇前にわざわざ藤堂詩織のそばまで歩み寄り、彼女の肩をぽん、と叩いた。「藤堂君、準備しておきたまえ。後で君も壇上に上がって少し話してくれ」

「田中院士、わたくし……」藤堂詩織が言い終わらないうちに。

「決まりだ」田中院士は彼女に断る隙を与えず、楽しそうに踵を返した。

藤堂詩織は呆然と、その場に立ち尽くした。

壇上では、田中院士の話が平易な言葉で本質を突き、聴衆を引き込んでいた。

皆が熱心に聞き入っていると、彼は不意に話の矛先を変えた。

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