第56章

佐伯俊彰はとっくに身を乗り出し、ほとんどテーブルに突っ伏さんばかりの勢いだ。彼が見せかけで持っていたノートは、いつの間にかびっしりと速記録で埋め尽くされていた。

鈴木明がテーブルに置いた手の人差し指は、無意識のうちにホワイトボードの推論図をなぞり、滑らかな天板の上を何度も何度も滑っていた。

末席に座る若い研究員たちは、息遣いさえも潜め、物音ひとつ立ててこの恐ろしいほどの雰囲気を乱すまいと固唾を飲んでいた。

三時間。

ホワイトボードの上では、誰もが行き止まりだと判断していた技術ルートが、藤堂詩織によってロジックとデータで、天へと続く大通りへと無理やり築き上げられていた。

理論的根拠から...

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