第60章

結城時也の声は硬く、真っ向から否定した。

「科学研究において最も忌むべきは、偶然の成果に惑わされることだ」

彼は横を向き、傍らに自信たっぷりに佇む白川詩帆へ、明らかに態度を和らげて命じた。

「詩帆、後でグループ技術部に詳細な分析報告書を提出させろ」

「継続的なデータによる裏付けと、厳格な第三者検証が見たい」

「表面上の見栄えのいいデータに騙されるな」

白川詩帆はすぐさま事務的な態度を取り、頷いて賛同した。

「はい、結城社長。私が責任を持って進めます」

藤堂詩織は黙って聞いていた。

彼が自分の日夜の努力をいとも簡単に否定するのを聞いていた。

彼が自分の成果を「偶然」の一言で片...

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