第65章

給湯室で、数人の総務部の社員がハーブティーを淹れながら集まっていた。

「ねえ、新しく来た藤堂部長って、前は本当に……ずっと専業主婦だったの?」勤怠管理担当の女の子が声を潜め、好奇心に目を輝かせた。

「そうよ。人事部のほうで、もう履歴書が出回ってるわ」もう一人が唇を尖らせた。「何年も職場から離れてたのに、いきなりチーフエンジニアとして天下りなんて。佐伯社長のこの一手は、本当に理解できないわ」

白川詩帆がカップを持って近づいてきて、絶妙なタイミングで会話に割り込んだ。その顔には、どこか無邪気さと心配の色が浮かんでいる。「そんなこと言っちゃダメよ。もしかしたら藤堂部長には、私たちが知らないすご...

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