第68章

結城時也の眉間に深い皺が刻まれ、藤堂詩織への嫌悪がさらに一層深まった。

彼が口を開こうとしたその時、佐伯俊彰がまるで救世主でも見つけたかのように、大股で歩み寄り、親しげにその腕を掴んだ。

「結城社長、ちょうどいいところに来てくれました! 是非ともあなたに紹介したかったんですよ。こちらが、今回のプロジェクトの切り札、藤堂博士です!」

結城時也の視線は佐伯俊彰を通り越し、刃物のように藤堂詩織に突き刺さった。

彼は紹介の言葉を無視し、冷たい声で言った。「佐伯社長、なぜ彼女がここにいる?」

その問いはあまりに唐突だったが、その場にいた誰もがその意味を理解した。

これは詰問だ。

白川詩帆が...

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