第71章

藤堂詩織は伏し目がちに、無理に作ったような笑みを唇に浮かべ、そっと囁いた。「限られた時間の中で、何か意味のあることができるのは、嬉しいです」

金田風雅は重苦しい気持ちで言った。「今の医療技術は発達している。そう簡単に気を落とすな」

「秦野弥は癌の分野で長年研究している。彼の研究室に行って、もっと詳しく聞いてみるといい」

秦野弥はその機に乗じて口を挟んだ。「先生のおっしゃる通りです。僕たちはどうも悟りが悪くて。もし君が加わってくれるなら、研究のスピードはきっと飛躍的に上がるはずです」

藤堂詩織は心を動かされながらも、どこか躊躇いを見せた。「でも、私はこれまで癌に関する研究に携わったことが...

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