第78章

そのピジョンブラッドの指輪の開始価格は千六百億円だったが、白川詩帆はほぼその三倍の価格を付けた。

隣の席からすぐに競りの声が上がり始める。

「三千二十億円」

「三千二百億円」

白川詩帆は一瞬落胆した表情を見せ、結城時也に小声で二言三言囁くと、すぐに嬉しそうな顔で再び札を掲げた。

「五千億円」

この価格が告げられると、会場からはもう誰も声を上げなかった。

一つには、それだけの価値がないから。

二つには、誰もが白川詩帆がこの指輪を絶対に手に入れたがっていること、そして結城時也が彼女を甘やかし、いくら高値であろうと出すつもりでいることを見て取ったからだ。皆、自らつまらない付き添い役に...

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