第112章

「……で、どうしたいの?」

水宮雪音は腕を組み、じっと彼を見た。

「キス」

江原翼は少しだけ目を伏せ、期待に満ちた顔で雪音を見上げる。

その視線がむず痒くて、水宮雪音は思わず顔をそむけた。

――と、次の瞬間。

江原翼がすっと距離を詰め、彼女の頬にちゅっと素早く口づけて、何事もなかったように離れる。

背中を向けて歩いていく彼を見送りながら、水宮雪音は行き場のない苛立ちを胸の奥に押し込んだ。

黙ってドアを閉め、部屋へ戻る。リビングに目をやれば、置いてあるのは小さなお菓子やスナックばかり。

疲れた身体をソファに沈め、雪音は七海にメッセージを送った。

『今夜は先に帰らない』

秒...

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