第12章

「アヤメ姉さん、大丈夫?」

あまりにも急な出来事で、七海はただ頭が追いつかなかった。

水宮雪音は小さく首を振り、穏やかな声で言う。

「うん、大丈夫。たいしたことじゃないよ」

七海から渡されたグラスを受け取り、指先に伝わる温もりを確かめる。張りつめていた神経が、ほんの少しだけほどけた。

雪音は平然を装った。

「七海。病院のほうと入職に関して、いくつか条項を改めて詰め直したの。悪いけど一度行ってくれる? 向こうも対面で確認が必要みたい」

七海は法学部出身だ。連れていけば、雪音は余計な揉め事をかなり避けられる。

「分かりました」

即答した七海だが、顔の心配は薄れるどころか濃くなる...

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