第143章

水宮雪音のほうが、数秒沈黙した。

『そっちで、あの男の身元は割れそう? それとも、誰かに指示されて動いてる?』

なぜだろう。村坂博の口から「買収された人間がいる」と聞いた瞬間、彼女はむしろ胸のつかえが下りた。

怖いのは、何も起きないことだ。

何も起きなければ、江原翼のそばにいる『あの人物』の狙いが、かえって見えない。

『調べてる』

村坂博は一拍置き、『ただ雪音、今すぐ鑑定機関を変えたほうがいい。ここはもう安全じゃない』

水宮雪音はソファにもたれ、指先で肘掛けをとん、とん、と叩く。

『変えない』

『……は?』

村坂博が間の抜けた声を漏らす。

『変えないって言ったの』

水...

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