第29章

「アヤメさん、だったかな?」

竹田正明が笑いながら、水宮雪音へ視線を向ける。

雪音が小さく応じると、彼は間髪入れずに続けた。

「こちらが江原翼くんだ。若いのに資産はすでに億超え。伸びしろだらけの青年だよ」

竹田正明は浮かれているようでいて、肝心なところは一切抜かりがない。

旧友からは、アヤメと江原翼を引き合わせ、縁を取り持つ「仲人役」を頼まれていた。

その話を聞いたときは、正直首をひねった。

江原翼のことなら知っている。江原家の若旦那は早くに結婚したが夫婦仲は良くなかった。家にいた奥方も気性が荒いタイプで――若くして亡くなり、翼は鳏夫になった。

この五年、翼は完全に仕事の鬼へ...

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