第36章
「――あいつは誰だ」
江原翼が低く吐き出した。その瞳の奥には、いつもと違う火が灯っている。
熱を帯びた視線が突き刺さり、水宮雪音は眉をひそめた。
「放せよ……っ、くそ……!」
オンリーが止めに入ろうとして、痛みに顔を歪めたまま、どさりと床へ座り込む。
「オンリー!」
駆け寄ろうとした水宮雪音は、その瞬間――手首を掴まれていることを思い出す。江原翼だ。
「水宮雪音。自分が何してるか、分かってんのか」
声は低い。ひとつひとつの言葉が歯の隙間から絞り出されるみたいで、嵐の前の湿った怒気が滲んでいた。
手首に走る痛みに、水宮雪音は顔をしかめる。振りほどこうとしても、逆に締め付けが強...
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