第38章

『名うての江原グループ当主ともあろうお方が、盗み聞きなんてなさるんですね。いやあ、意外だなぁ!』

オンリーは余裕しゃくしゃくで江原翼を見つめた。さっきまで水宮雪音の前で見せていた甘えた顔は影もない。上から下までじろじろと検分し、鼻で笑う。

……なんだ、こんな顔か。

大して変わりゃしない。目が二つに口が一つ。街にいくらでもいる。

本人がそう思っていると知ったら、世間はきっと声をそろえて反論するだろう。江原翼を知らない人間でも、まず目を奪われるのはこの顔だ。

『ドアの前で、ぜんぶ聞こえてたんでしょ?』

オンリーは挑発するように顎をくい、と上げる。

『江原様。ビジネスの世界じゃ感情に...

ログインして続きを読む