第57章

過去の記憶が、濁流のように一気に彼の脳内へとなだれ込んだ。

――このブレスレットは、本当は水宮雪音への記念日の贈り物として用意したものだ。

それが巡り合わせの悪さで、笹谷幽々子に贈ったものだと誤解されてしまった。

江原翼の瞳は、わずかに陰る。

頬を伝う幽々子の涙を見て、苛立ちを隠さず吐き捨てた。

『泣くな。ただのブレスレットだろ』

笹谷幽々子は、はっと息を止めた。

そんなに、軽く片づけるなんて。

これは――彼が自分にくれた、確かに「贈り物」だったのに。

幽々子はしゃくり上げながら訴える。

『翼さん、これ……あなたが私にくれたんですよ。忘れたんですか?』

その言葉を聞いた...

ログインして続きを読む