第76章

江原翼は一瞬ためらった。――この問いを、今まで考えたことすらなかったのかもしれない。

しばらく思案したのち、改まって口を開く。

『……友だちだ』

友だち?

それも、胸のいちばん柔らかい場所にしまってあるような――そんな友だち、ということだろう。

その言い分があまりに可笑しくて、水宮雪音は笑いそうになった。

後部座席のオンリーが、ふっと鼻で笑う。

『友だちが、奥さんより大事ってこと?』

江原翼は顔を曇らせ、ルームミラー越しに鋭く睨みつけた。

オンリーはどこ吹く風だ。

『穹、悠人、ちゃんと座ってろ』

江原翼が唐突に言った、その次の瞬間――。

ききっ。

急ブレーキ。

オ...

ログインして続きを読む