第9章

「執事、二人を着替えさせて、何か食べさせて」

江原翼は、怒りに震える水宮雪音を見つめた。

そして一度、呼吸を整える。感情の揺れを押し込み、またいつもの冷静さを纏った。

「二人に食べられないものはあるか? アレルギーも含めて、先に言ってくれ。執事に手配させる」

何事もなかったかのような声だった。

水宮雪音は悔しさに肩を震わせる。江原翼は重ねて言った。

「君と俺の話は、あとでいい。まず子どもを食事に行かせよう」

子どもは母親の急所だ。

水宮雪音も例外じゃない。

空気が抜けた風船みたいに、彼女の力がふっと落ちる。目尻が真っ赤だった。

「行かない」悠人が言い切った。

小さな二人...

ログインして続きを読む