第92章

水宮雪音が脇から声をかけた。顔には、隠しきれない不安が浮かんでいる。

だが男は骨のあるタイプで、まだ江原翼に殴りかかろうとした。伸ばした腕を、江原翼が容赦なく床へ叩きつける。

両腕とも、もう使い物にならない。

――こいつの手が雪音に触れた。

そう思っただけで、翼は切り落としてやりたい衝動に駆られた。

『江原様! もうやめてくれ!』

男はようやく命乞いをし、恐怖で顔を引きつらせる。

江原翼が拳を振り上げた、そのとき――。

水宮雪音が飛び出し、翼の手をぎゅっと掴んだ。

『……もう、いい。ここまでで』

本当に死人でも出たら、想像するだけで背筋が冷える。

雪音は緊張で強張った顔...

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