第7章

 貴美が高慢に背を向けて去っていく。その背中を見送った瞬間、胃の奥がぐらりと揺れて、吐き気がこみ上げた。

 その日の夕方。私は平井の、今にも崩れそうなアパートのドアを叩いた。

 中にいた平井は、無精ひげだらけの顔でソファに沈み、私を見るなり力なく口元を歪めた。

「見物に来たのか、ユカリ。500万円だ。俺は3年かけて煮詰めた『ニューロン・ブリッジング・アルゴリズム』を、あの性悪な金の亡者に売った。古井家の弁護士に言われたよ。サインしなきゃ、明日には身に覚えのない麻薬所持でぶち込まれるってな」

「立って、平井」

 私は歩み寄ると、彼の手からボトルをひったくり、冷水を顔面にぶちまけた。び...

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