第6章
その瞬間、居間から聞き覚えのある声がした。
「楓花? 目が覚めたのかい?」
ううん、録音?
私は忍び足で居間に向かい、角からそっと中を覗いた。ソファに男の人のシルエットが座っており、その金茶色の髪が陽光を浴びてきらめいている。分厚い法律書をぱらぱらと捲っていた。
「湊斗?」思わず声が出た。
男の人が振り返り、その深い青色の瞳が温かくきらめいた。
「おはよう、妻」
妻!?
世界がぐるぐると回り、倒れそうになる。湊斗がすぐに立ち上がって私を支えてくれた。
「どうしたんだ? 顔が真っ青だよ」
「わ、私たち……」私はどもりながら言った。「結婚してるの?」
湊斗は一...
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