第112章 三千万

木村勇斗が菅田美波の腕をぐいっと掴み、声を潜めて早口でまくし立てた。

「お前、正気か!? 加藤陽斗は性格は最悪だけど、セミプロレーサーだぞ! それにあいつのマクラーレン、海外のトップチームに大金払ってフルチューンしてんだ。何で勝負する気だよ!?」

菅田美波はさりげなく木村の手を外し、表情ひとつ変えない。

「何ビビってんの」

まぶたすら上げず、投げやりな口調。まるで3,000万が小銭みたいに言い放つ。

「負けたら私が払う。勝ったら、あんたの取り分」

木村勇斗は完全に言葉を失った。

冷ややかで、息を呑むほど整った顔。そこに焦りも迷いもない。見ているだけで、なぜか胸の奥に――根拠のな...

ログインして続きを読む