第115章 天才

帝都大学図書館。

午後の陽射しが巨大なガラスドームを透かして降り注ぎ、空気にはかすかな紙とインクの匂いが漂っていた。

菅田美波は黒いウインドブレーカーのポケットに片手を突っ込み、もう片方の手に借りたばかりの原書を数冊抱えたまま、冷えた顔で大理石の階段を下りていく。

一階ロビーに足を踏み入れた瞬間、進路が――人の壁で塞がれた。

先頭に立っていたのは、数日前に階段で菅田雨子の頬を張った、T市名門社会のお嬢様、柳沢絵梨。

今日は派手な赤のオートクチュールのセットアップ。腕を組み、顎を高く突き上げ、傲慢さを隠しもしない。

その背後には見覚えのある取り巻きだけじゃない。菅田美波のルームメイ...

ログインして続きを読む