第117章 距離を置く?

菅田美波は寮へ戻る並木道を歩いていた。そこへ届いた誘いの言葉に、眉がわずかに寄る。

脳裏に浮かんだのは、昼間の図書館で柳沢絵梨が吐き捨てた、あの傲慢な一言だった。

『私のお姉ちゃん、もうすぐ菅田承吾様と婚約するんだから』

――婚約間近の男が、あちこちで女を誘う?

「……暇じゃない」

菅田美波の声は曖昧で冷え切っていた。距離を置く意志を、隠しもしない。

「おじさん、もうすぐおめでたいんでしょ。だったら、ちゃんと線引きしたほうがいい。余計な誤解、招きたくないし」

そう言い切るなり、美波は承吾に弁解の隙すら与えず、ぷつりと通話を切った。

耳に残るのは、ツーツーという無機質な音。

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