第15章 彼女がまさか勝った

賭けの声が、いっせいに湧き上がった。

ほとんど全員が、石井庄助の勝ちに札を積む。

興奮した連中はスマホを取り出し、石井庄助の取り巻きへ次々と送金していく。顔には、見世物を待つ下品な笑み。

彼らにとって、これは勝負ではない。

負けようのない投資だ。

タクシーを転がすデブの女が、J市トップクラスのレーサー、石井庄助に勝つ?

そんな話を、誰が信じる。

菅田美波はその場に立ったまま、冷えた視線で一枚一枚の顔をなぞった。

嘲り、愉悦、期待。どれも同じ。胸は一ミリも揺れない。

――それでいい。

賭け金が膨らむほど、回収も大きくなる。

そのとき、低い声が喧騒を裂いた。

「俺は、菅田...

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