第16章 もう一度勝負する

場は、死んだように静まり返った。

夜風が地面の砂ぼこりを巻き上げ、呆然と固まった顔々を撫でていく。

まるで定身術でもかけられたみたいに、全員の思考が止まっていた。視線が釘づけになっているのは、フロントがわずかに歪み、ボディは傷だらけ――それでも王者のようにゴールラインへ鎮座する、あの年季の入ったタクシー。

そして、ゆっくりとドアを押し開け、降りてきたひとつの影。

誰かがひゅっと息を呑んだのを合図に、異様な沈黙が破れ、堰を切ったようなざわめきが雪崩れ込んだ。

「勝った……マジで勝ったのか?」

「夢だろ……サンタナが、改造ポルシェ911に勝つとか……!」

「さっきのドリフト……コー...

ログインして続きを読む