第42章 お金がかかる

菅田美幸は娘に怒鳴られ、思わず首をすくめた。言いかけていた言葉は、喉の奥へ丸ごと飲み込む。

ヒステリックに荒れる菅田雨子。ゴミ箱に突っ込まれた、真新しいワンピース。心が抉られるように痛むのに、美幸はそれ以上、何も言えなかった。

今の自分にとって、菅田雨子だけが唯一の望みだと分かっていたからだ。

翌日、T市の空はどこか重く曇っていた。

菅田美波は目立たないジャージに着替え、マスクとキャップで顔を隠す。行き交う人波の中へ溶け込み、海へ落ちる一滴の水みたいに気配を消した。

何度も曲がり角を変え、遠回りを重ねる。辿り着いたのは、旧市街の片隅にある、ぱっと見ではただのドヤ街のアパートだった。...

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