第66章 探りを入れる

彼の声は急かしもせず、かといって緩くもない。淡々としているのに、目に見えない圧だけがじわりと押し寄せ、少女の心の防壁を崩しにかかってくる。

菅田美波は顔を向け、真正面からその視線を受け止めた。瞳の奥に、慌てた色は一欠片もない。

「ここ、地下リング戦があるって聞いたんです。面白そうだから、ちょっと見物に」

平然としすぎていて、逆に不気味なくらいだ。しかも、ほどよく興味を装った声色まで添えてくる。

「おじさんもさっき、二階の個室にいましたよね。おじさんだって見物じゃないんですか?」

菅田承吾が、わずかに目を瞬かせた。

嘘を重ねて逃げる――そういう想定はいくつもしていた。だが、ここまで...

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