第71章 夢遊病

菅田承吾はすでに起きていた。深いグレーのシルクのガウンを無造作に羽織り、バーカウンターにもたれながら、挽きたてのブラックコーヒーを手にしている。

鍵が小さく鳴り、リンクスが扉を開けて入ってきた。恭しくも、どこか重い表情で口を開く。

「主様、昨夜……」

言い終える前に――。

がらり。

主寝室の引き戸が内側から開いた。

リンクスは反射的に視線を上げ、次の瞬間、雷に打たれたように硬直した。

菅田美波が出てきたのだ。

身体に沿う黒いシルクのパジャマ。その上に大きめのマウンテンパーカーを適当に引っかけ、白い素足のまま。欠伸を噛み殺しながら、のんびりと主寝室から歩いてくる。

艶のある黒...

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