第77章 手伝い

冷たいタイルに背を預け、美波は深く息を吸った。前世で叩き込まれた痛覚耐性の訓練で、この締めつけるような痛みをねじ伏せようとする。――けれど、まるで効かない。

致命的なのは、衛生用品を何ひとつ持っていないことだった。

菅田美波は青白い唇を噛み、洗面台に手をつきながら、浴室のドアをほんのわずかだけ開ける。

「おじさん……」

声がかすれる。いつもの冷たさも鋭さも薄れ、滅多に見せない脆さが滲んだ。

外のスイートルームでは、菅田承吾がソファに腰を下ろし、膝の上のノートPCでカンクンの裏社会の最新動向を追っていた。その弱い呼び声を聞いた瞬間、キーボードを叩く指がぴたりと止まる。

眼差しが一気...

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