第8章 反撃

タクシーが夜を裂いて疾走する。加藤浩史の顔色は、窓の外の闇より青かった。

両手を髪に突っ込み、肩と背中は硬く強張っている。

菅田美波はシートに身を預け、淡々と横目で彼を見ていた。恵まれた家庭、躓きのない人生。温室で咲いた花みたいに、嵐を知らない。

だからこそ、この唐突な災厄は――浩史の誇りも余裕も、根こそぎ奪い去った。

一方で彼女は、刃の上を歩くことに慣れている。危機が深いほど、頭は澄む。

「環科ビル、着いたよ!」

運転手がブレーキを踏み込む。ぎい、と車体が沈み、車内の死んだ沈黙が破れた。

菅田美波はドアを押し開け、魂の抜けた浩史の腕をぐいと引く。

「降りて」

環科ビル最上...

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